森の勉強を始めたわけ③
勉強を始めた理由として最後にメモしておくべきは、私は版画を木に彫っているからということ。理由はまだ色々あるが。
ツゲやツバキなどの硬い広葉樹の枝あるいは幹に、ビュランで傷をつけて版画にするのが木口木版。 ハガキに丁度良いぐらいの版木でも年輪を数えると自分と同い年ぐらいだったり、少しだけ大きめの版木になると確実に自分より年上だ。 私が浮かれ騒いでいた時も、この木は森の中もしくは誰かの家の庭の片隅でじっとしていたのだ。
木口木版は続けたい。だから、版木となる樹木のことを知っていきたいと思う。自分のくだらない絵のために、刃物で傷つけてしまっている相手はどんなものなのか。
写真左と下の大きな材は山で拾ったヒノキ。 右は版画仲間さんから頂き物のツバキ。 (年輪を数えてみたら私より10歳ぐらい若かった。)樹木は形成層が肥大して年輪を重ねていく。
そして、写真のヒノキは心材(色素が溜まって赤く見えるところ)と辺材の区別がよく見える。 形状も相まってアボカドのようにも見える。ツバキは心材と辺材の区別は無い。
写真のヒノキは鋸かチェーンソーで切られたそのまま。ツバキのほうは、材木屋さんが磨いてくれたものだが木口木版の版木にするにはここから更に一手間必要だ。とはいえここまで仕上がっているとかなり楽で、あとは1000番と1500番の紙やすりで磨き上げて鏡面を出せれば完成しそう。
針葉樹と広葉樹の材としての違いメモー 木繊維の中に管のような細胞の「道管」が多数あるのが広葉樹。 道管のあり方は三種類。 大きな道管が年輪にそって並ぶのが「環孔材」、小さい道管が全体に散らばるのが「散孔材」(ツバキはこれ)、道管が放射状に並ぶのが「放射孔材」。 道管ではなく、網目のような仮道管が規則的に並ぶのが針葉樹。 松などヤニが出る樹種は「樹脂道」がある。