2026年2月のメモ「漆」

とても良い展示を見たので、今月はその感想を毎月のメモの代わりに記しておこうと思います。

「artisansと輪島塗 ー輪島塗 そのさきー」という展示を見ました。

※横浜のそごう美術館にて2月23日まで

展示は2024年の震災被害状況を伝える写真から始まり、輪島塗の歴史から、材料、技法の紹介から人間国宝の作品まで。

輪島塗は工程ごとの専門職人さんによる分業で、漆の木から漆を採る職人さんから、出来た塗り物に装飾を施す職人さんまで、各工程の職人さん達が使う道具も展示されており、それらも素晴らしかったです。デジタル機器は使い込んでも壊れるだけだけれど、そうならない道具達。

(ふと、私が使っているビュランも、あと何十年かしたらこんな風合いが出てきたら嬉しいなと思いました。私はビュランを初めて手にしたのが39歳、平均寿命をまっとうしたとしても40年ぐらいしか使い込めませんが・・・)

展示を通して、一つのお椀がとにかく沢山の工程、時間、職人の技の結集だと分かります。

特に、木材から輪島塗の無地のお椀が出来るまで各工程につきひとつお椀が並んでいた光景は圧巻でした。その数27個。

また、出来た土台に施される装飾にもいくつか種類があり、それも完成するまでには工程が沢山。

「蒔絵」などはそのひとつとして有名なのではないでしょうか。

前述の27個のお椀も装飾工程も、それぞれ手で触って確かめることが出来る木片が展示されています。

木の変化を手で触れて体験できるのはとても興味深かったです。と同時に、コロナ渦以前のおおらかさを久々に感じました。

最後に、展示出口付近に石川県立輪島漆芸技術研究所の入学願書が置いてあるのですが、私が例えば中・高校生あたりにこの展示を見ていたら・・こっちを目指してしまったのではないだろうかと思ってなりません。

そして、私は展示を見て思い出した映画と本と建物がありました。

映画は大西暢夫監督「炎はつなぐ」、本は藤沢周平の絶筆「漆の実のみのる国」、建物は会津若松の「白木屋漆器店」です。

「炎はつなぐ」は、一本の和蝋燭が出来るまでに関わる日本各地の職人達のドキュメンタリーですが、そこに、今回の展示で紹介されていた漆かき職人(漆の木から漆を採る職人)さんが出ていた、と思います。日本の漆のほとんどが岩手県二戸市で採取されるもので、映画にも二戸市の漆の林が出てきました。この映画は素晴らしく、一本の蝋燭について私は何にも知らないのだと思いました。和蝋燭の灯心の周りにはごく薄く真綿が巻かれているなどと、日本人のどれだけが知っていることでしょうか。

こうしたら売れるから、こうしたら早く出来るから・・は全部人間の都合なのだけれど、自然の都合や和蝋燭側の都合でものが出来上がっていく様子に考えさせられました。

功利主義やタイパコスパという言葉と距離を置いた世界のものは、それ自体もそれに関わる人たちも尊敬したくなります。

「漆の実のみのる国」は、岩手ではなく米沢藩が舞台、領内に漆の木を100万本植えることで豊かな国にしようと願った上杉鷹山の生涯を描いたものです。(実は読了出来ていない!)鷹山は何故大河ドラマにならないのか不思議なのですが、きっと正しい人間すぎてドラマにならないのかもしれません笑

会津の白木屋漆器店は、輪島塗ではなく会津塗のお店。建物も素晴らしく、内部に小さい博物館的なコーナーがあり、漆かきをした跡のある漆の木も展示されています。会津塗というのもまた素敵で、酒器は我が家の定番です。

ウルシ、ハゼ、ヌルデなどは森林インストラクター試験によく出る樹種。ハゼやヌルデは日常的によく見かけるのですが、住んでいる地理的に実際に生えている漆の木を見たことがなく、会津の漆器店に続き、今回の展示で漆かきの横線のついた樹木を見ることが出来て良かったです。

今後も日本が漆やハゼの樹木が健康に育つ国であって欲しいし、その技術がなくならないことを祈ります。とはいえ、このままの物価高が続けば高級な漆器に手を出す機会は減るのかも、などと憂いて展示会場を後にしたのですが・・同じ建物の地下食品売り場では高級チョコレートに行列(バレンタイン時期なので)。チョコレートが高価になることにも理由はあるのでなんとも言えませんが、輪島塗(を始めとする、守っていくべきもの)にもお金を使っても良いと思ってもらうにはどうしたら良いのだろうか・・?チョコの入れ物を輪島塗の小箱とかにしたら?などと浅知恵を浮かばせつつ、帰ったらビュランを研ごうという気持ちとともに帰宅したのでした。

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◆メジロ

ヒサカキなどの実を食べていた先月と異なり、咲き始めた花の蜜をしきりに吸う。梅や河津桜など。

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